本書が書かれた経緯

 本書は、自分で管理するSNSに興味がある方向けの、忘備録のようなものです。

 2023年、当時はまだTwitterと呼ばれていた巨大SNSプラットフォームに幾つもの大きな変化があり、SNSとの付き合い方を模索する人が増えました。他のSNSを試した方も多くいて、その1つとしてFediverseを舞台とする分散型SNSの世界があり、そこには自身でSNSを構築・管理・運用するという選択肢がありました。

 筆者には、個人的な創作作品発表サイトを主に手打ちタグメインに作成してきた経歴があり、同じように創作活動を趣味(或いは仕事の一部)とする仲間には、自身のブランディングの一環や気兼ねなく情報発信できる場所として個人的にSNSサーバーを構築したいと考えた人が他にも何名もいました。そこで、そのうちの数名と唆し合い、各々がそれぞれのSNSサーバーを実際に構築してみました。

 筆者はたまたま、Fediverseの世界が性に合い、更にはSNSサーバーの(モデレーションなどのコミュニティ運用面ではなく)機械的な管理面でのちょっとした手入れや建て比べに夢中になった時期もありました。

 筆者のそうした行動を知った創作仲間から、SNSサーバーを持つことに関するアドバイスを求められたことも何度かあり、その疑問に応える形で忘備録をnote記事として残したこともありました。

 そんなこんなで自分のSNSサーバーという新たな趣味にハマっていつの間にか1年が経ちましたが、自分での管理を諦めて他の方のSNSに参加する方がいる一方で、まだ興味を持っていそうな後進候補の気配を感じるのも事実です。

 なので、一度どのようなサーバーをどう建てて、どうやって維持して、万が一に備えて、卒業するか、一連の流れを全て網羅した忘備録を本にするのはどうだろうかと思い立ちました。

 本職・趣味とも技術関連とは縁が薄く、技術的な関心!というより忘備録や後進へのアドバイス本として書いておりますが、それでも内容としてはFediverse上にてどうやって自分のSNSサーバーを構築するのか、その恐らくは技術的な面に関するものが多いと思いましたので、自分の中では技術書っぽい忘備録として位置付けております。

本書の想定する読者層

 レンタルサーバーで個人サイト・ブログを作ったことがある程度の知識や興味のある方をメインに想定しております。

 また、自分でSNSを構築することに対して、全体的な流れや手順に対する取っ掛かりを一冊で網羅したい方にもお役に立つかもしれません。

 日本での活動をメインとしている方が読むとの前提で、日本語や英語の表記について言及することがあります。

本書で分かること

 Fediverseという、様々な思想・運用のサービスが繋がる場所で、自分自身が管理するSNSを構築・管理する方法について扱っています。

  • Fediverse上にあるSNSプラットフォームの一部についての概要

  • 構築方法について、概要や手順

  • 技術的な管理方法(コミュニティの運用方法ではないことに注意)

本書の限界

 なるべく網羅的な内容を一冊にまとめようとしたため、個々の具体さに欠ける場合があります。また、ほぼほぼ文章のみで成り立っており、図や音声、動画などでの理解度が高い方には向きません。

 また、本書に限った話ではないですが、技術は日進月歩ですので、内容が古くなりすぎて、現状にそぐわない場合があります。本書は主に2024年7月に執筆しておりますので、それより後のことについては取り扱いが不十分なことがあります。

Fediverseとは?

 元々の言葉の成り立ちとして、『連合』を表す“Federation”と『世界』を表す“Universe”から作られたことからも想像できるかと思いますが、Fediverseは単一のサービスではなく、様々な形式、様々な提供元によって成り立つ場所です。SNSサービスのMastodonやMisskeyも参加しており、他にも画像や動画を共有できるサービスがあったりもします。

 MastodonやMisskeyはActivityPubという規格(共通の決め事みたいなもの)を使用して、別々のサービスであるにもかかわらず、相互にやり取りができるようになっています。

 更に、各サービスについても複数の提供元と中の人(よく言われるサーバー管理人、略して鯖缶)が存在しており、独自の運用などにより、各ユーザーの居心地・使い心地に影響を与えています。

 MastodonやMisskeyは、分散型SNS、という言い方もされるようです。

 分散型SNSユーザー有志のホームページ( https://fediverse.pcgf.io/ )にてActivityPubを採用している分散型SNSについて紹介されていますので、MastodonやMisskeyと違うサービスは、そこで探してみても良いかもしれません。本書では、あくまでも、MastodonやMisskey、及びそこから派生したフォーク(独自機能の追加などで本家から枝分かれしていったもの)をメインに綴らせていただきます。

本書でよく出てくる俗語的な表現について

 特に本書内で書くことが多いものについて、本書内での主な意味合いを掲載します。

 サーバーのことです。

自鯖

 自分で管理するサーバー(本書では特にSNSサーバー)を指します。

他鯖

 自分で管理していない、他人の管理しているサーバーです。

コマンドを叩く

 コマンドを入力し、エンターキーを押すことを指します。

 VPSでコマンドを叩く、と書かれている場合、SSHなどでVPSサーバーに接続してコマンドを入力する(VPS、SSHについては本書内で出てきます)ことを示していることが多いです。

02-01・本書で取り上げるFediverse上のSNS