ひとまず原稿を終えて

 それなりに文章量の多い本書ですが、いかがでしたでしょうか。

 書き始める前から、この内容で本を出そうとしたら絶対に薄くは済むまいと予想していましたが、気が付いたら軽く100ページを超えて行って、途中からは増えるページ数に乾いた笑いが……いえ失礼。

 流石に200ページは行かないよね、と、冗談のような冗談じゃないようなことを考えながら執筆しておりました。

 結局、後書きで調子に乗りすぎてしまったので、200ページ行きましたけどね!

本書が書かれた経緯

 前書きでもこのタイトルで綺麗事を書いたと思うのですが、せっかくの後書きなので、もう少し赤裸々に裏事情を暴露しても良いんじゃないかな、と思っています。

 本書については、いくつかの要因が絡み合って、この形で世に出すことにいたしました。

 どの要因が欠けても、きっと別の形の何かになっていた、もしくはそもそも世に出なかったであろうことを考えると、縁の巡り合わせの不思議さを感じます。

要因その1・Fediverse自鯖の建て比べに沼った筆者

 と言っても、どっぷり沼っていたのは2023年の話で、今は建て比べはしておりません。

 せいぜい、kmyblue自鯖をメインに、Misskey自鯖をサブに……

 ただ、今の状態に落ち着く前は、HostdonさんでMastodonを建ててもらったのを皮切りに、Calckey(当時は存在していたMisskeyのフォーク)を建て、Misskeyを建て、CalckeyがFirefishという名前になっても追いかけ、Misskeyを更に複数建てては潰し、Sharkey(これまたMisskeyのフォーク)も建て、と、まあ、少しばかり手広くやっていたわけです。

 他のMisskey系フォークにも管理経験があるにもかかわらず、今回本書で取り上げなかったのは、これらはMisskeyのフォークではありますが公式ドキュメントが英語でハードルがワンランク上がること、管理から手を引き、現状を把握していないものもあること、などなどの理由であり、決してこれらがSNSプラットフォームとして魅力的でなかったことはありませんので、興味を持った方は調べてみると良いでしょう。

 とは言うものの、本文中でも述べた通り、特に少人数で開発されているフォークはいつまでも存在するとは限りませんので、その点も踏まえて調べることをお勧めいたします。

 正直なことを書くと、Mastodonについてはkmyblueというフォークを紹介しておきながらMisskey側のフォークを紹介しないことを、不公平かな、と考えなくもないのですが(そして実際、初期の原稿ではとあるフォークも紹介していたのですが)、Misskeyやそのフォークの情報があまりにも目まぐるしく変化していくこと、前述の通り公式サイトが英語であったり(中級者なら説明しなくても大丈夫だろうと思われる範囲の)説明が簡素化されていたりすること、などなどのことを考えると、どうしても……

余談・個人的に今後が気になっている実装

 原稿を書き上げた後にですね、Hollo( https://docs.hollo.social/ja/ )という1人用の連合マイクロブログソフトウェア(2024年10月頭の段階では、Railwayというサーバーアプリを簡単にデプロイできるプラットフォームおよびオブジェクトストレージを利用することで、VPS要らずで建てられるかもしれない軽量アプリ)が話題になったんですよ。

 ものすごく機能の取捨選択が上手で、しかもまだ発展途上で実装予定の機能もあるということで、技術面に興味のある方々には非常に興味深いアプリなんじゃないかなぁと思います。

 SNSをSNSとして利用したいおひとりさまには良い選択肢かも。

 あと、何が嬉しいって、公式に日本語ドキュメントが整備されているんです。

 もし仮に本書がものすごく反響あって、第二版を検討するような事態が発生したら、Holloについても項目増やそうかと思っているくらいには、今後が気になっています。

要因その2・鯖缶を目指した初心者仲間たち

 前書きにも書いた通り、時には唆し合い、時には助け合い、時に頼って時に頼られる、本書を書き始めた当初に推定読者としてターゲットにされた方々ですね。

 筆者は先輩鯖缶さんに直接突撃して助けてもらうことが非常に苦手で、自分で色々検索しながら作業することが多いタイプでした。

 ですが、昨今やはり何をどう検索するか、については一定のコツが必要なようで、それよりも身近にいるそこの友だち鯖缶(=筆者)に聞いた方が早い!って思われたり、筆者自身も「検索しても情報が見つけにくいなら、自分で忘備録を書けば良いじゃない」という創作者にありがちな「ないものはつくる」精神の持ち主だったため、ここに需要と供給の一致が。

 そんなこんなで2023年、それなりの数のnote記事を書きましたが、記事が多いと、一々辿るのが面倒くさいんですよね。

 どこかでまとめて見られる方が便利だけれど、多分、そんな便利な本は無さそう(サイトはあるかもしれない)

 ……うーん仕方ない、「ないものはつくる」しかないですよねえ?

余談・メンテナンスの大事さを示す数々の事件

 筆者自身は一度書いた記事が見られたかどうかなんてこれっぽちも気にせず、note記事も全て投げっぱなしでした。

 しかし、他にヘルプ系ブログを書いていた友だち鯖缶さん曰く、建て方の記事には皆食いつくが、その後のメンテナンス関連記事は読まれない。

 仕方のない面はあります。

 鯖建て、は、区切りが目に見えやすく、余韻の残るうちに記事に残しやすいのです。手順だって、割と一本道だったり、便利スクリプトがあったり。更に、タイミングだって自分の最もやる気のある時にやれば良くて、失敗しても全部なかったこととしてリセットしやすいです。

 一方で、メンテナンスはどうでしょう。こちらは日々の目立たない作業です。しかも鯖建てに比べて必要な情報が多く、失敗した時は周りにも影響を与えます。メンテナンスが億劫になるのも、気持ちとしてはわからなくもありません。

 けれども、やはりメンテナンス(データベースのバックアップや諸々のアップデート)は大事なのです。

 大手鯖でも、データベースのバックアップや整備にしくじった結果、鯖ごと潰れてみたり、潰れずとも後々まで語り草になっていたりします。

 アップデートを行わなかったがために、スパムに乗っ取られて他の鯖から総ブロックされた鯖だってあります。

 なので、Fediverseで自鯖を建てる本を出すなら、一冊でメンテナンスのことまで書かなきゃな、と思いました。

 この文字だらけの本を読む素養がある方って、多かれ少なかれ文字を追うのが好きな方だろうから、書いておけば目を通してくれる可能性が高いです。

 また、よくある話で後からメンテナンスの重要性に気付いて情報を探す、となった場合、何もないところから手探りで探すよりは、何かしらの忘備録が残っていた方が、断然楽なのです。

 そんな訳で、本書は分冊化はしませんでした。

 興味を持って本書に手を出すのならば、メンテナンスのことまで知って欲しかったからです。

 まあ、そう言っている筆者も、一年経ってようやっとメンテナンスの記事が少しだけ書けるようになったような微妙なような、まだ自信を持てない状態なんですけどね。それだけメンテナンスは奥深く、万人向けの忘備録として記事に残すのが難しいのです。

 余談ですが、このメンテナンスの負担が当初の情熱を上回って個人鯖が閉鎖されることというのは、実は割とよく見られる光景で、概ね3ヶ月〜半年の間に爆破されがちのように思います。年単位で続いているサーバーは、かなりの猛者なのかもしれません。

要因その3・技術書典、および技術書系同人誌作成に沼った鯖缶仲間

 さて、本を出そう、と思ったことまでは良かったんですが、当初はのんびり原稿を書いて完成したら印刷所に出して製本してもらって、その後のことはその時に考えよう、という非常にマイペース、かつ気の長い考え方をしていました。

 そこに発破をかけたのが、2024年の春、技術書典16にて技術系同人誌デビューを果たした相戸ゆづなさん。

 情報がどんどん新しくなることによって記事のメンテナンスが大変になっていくこと(実際、2024年6月のXserver SNSの登場によって生じた記事の追記は大変面倒でした)、締切を設定した方が踏ん切りがつくこと、技術書典が如何に素晴らしいイベントだったか、ゆづなさんの熱い語りは筆者のお尻に火をつけました。

 更にはアフターフォローも万全で、GitLabを利用した原稿管理、そこにマークダウンを用いて書いた原稿をアップし、VivliostyleによるCSS組版を設定すれば、少なくともPagesにちまちま書き溜めるよりは遥かに効率的に執筆作業が進むことを教えてくれました。

 これぞまさに神の所業。もしくは、新たな沼へ手招きする悪魔の所業。

余談・今回の原稿で取り入れたアレコレ

 筆者は元々、小説やイラスト、サイト管理などを趣味としていました。

 今まで出したことがあるのは漫画等の折本、詩集や小説本で、主にClip Studioや縦式にて原稿作成を行ってきました。

 この度、初めて技術書っぽい本に挑戦するにあたり、最初はフロー型EPUBが出力できそうだという理由でPagesを使っていましたが、これがなかなか癖が強くて。

 見かねたゆづなさんが、前述の通り、Git、マークダウン、Vivliostyleを教えてくれたのです。

 Gitは差分が記録されるので、更新した箇所が分かりやすいです。

 マークダウン記法により、GitLab上に最低限の記述でそれなりの構成が再現されます。

 そして何よりVivliostyle。個人サイト手打ち勢には、とても面白い玩具だと思うのです。サイトをいじるような感覚で、原稿の見た目が変えられます。

Special Thanks

 いつまでも踏ん切りのつかない筆者を唆し、執筆にあたっての便利ツールをこれでもかと投入し、メンタル暗黒期の筆者の愚痴にも辛抱強く付き合ってくださった相戸ゆづな様。

 Dockerを全く理解できずにいた筆者の代わりに、丁寧な付録記事をご寄稿いただきましたtake様。

 折々に触れて原稿をご確認いただき、アドバイスをいただきました皆様。

 本書のキッカケを作ってくださった、創作・鯖缶仲間の皆様。

 筆者が投稿する原稿進捗を見守り、時に温かい絵文字リアクションで反応し、時に拡散してくださいました皆様。

 このようなご縁を繋いでくださりましたFediverseという世界。

 本書を発表する場をご提供いただきました技術書典というイベントと、その参加者の皆様。

 本書を手に取ってくださった皆様。

 この場をお借りしまして、厚く御礼申し上げます。

 ありがとうございます。おかげさまで、本書が形になり、筆者も報われております。

07・参考サイト一覧