……?
 死んだ、はずでは。
 最期の瞬間、息が止まるよりも先に、溶かされて。

 暗い。
 何も、見えない。
 音もしない。
 体が、どこまであるのか分からない。
 ただ、何もない。

 ……息はしている、のか?
 胸の上下を、感じない。
 脈も……ない。

 やっぱり、死んだのか。
 死後の世界は、何もないんだな。
 ……何も? 本当に?

 とてもゆっくりとした流れ。
 下から、上へ。
 途切れることはなく。

 土の奥を、虫が這うような……土の奥?
 でも今は「動きたくない」んだ。
 そんな、全体的な気怠さが、ある。

 何かが震えた。
 遠い。
 大丈夫、という判断だけはした。

 とてつもない違和感が、ある。
 でもあまりの気怠さに、それすらも、また沈んでいく。

 まどろむ。
 ここはどこだろう。
 わからない。

 まどろむ。
 少し醒める。
 何もないから、また眠る。

 まどろむ。
 暗闇の中、ゆったりとしていた「何かの流れ」がほんの少し、加速した。
 まだまだ、それは「冷たい」けれど……
 溶けた雪の、味がした。

幕間一 わたしの可愛い養い子