こうして智樹(ともき)は、異形(いぎょう)を宿したまま、再び人間社会での「生活」を始めることになった。
 死亡したことになっていた影響(えいきょう)で住居すらも失っていた智樹(ともき)に協会が用意したのは、町外れの小さな、けれど日当たりの良い家だった。裏手(うらて)には小さいながらも庭と井戸があり、『屍蔓(しかずら)の森』――『癒蔓(いやしかずら)の森』と改名されるらしい――にも近い。
「『保護(ほご)観察(かんさつ)』するためだからな。家賃(やちん)と水道代、光熱費は協会持ちだ」
 新居に案内してくれた篤司(あつし)が説明する。
 智樹(ともき)は家を見回した。ユキも同じく真似をして、(つた)がゆらゆらと()れる。日当たり良好、水道代は気にしなくて良いらしいけれど、もっと気兼(きが)ねなく水が飲める、井戸まである。
「……ありがとう、ございます」
「定期的に様子を見に来るが、何かあったら連絡しろよ。ドローン経由ででも、直接でも」
 (うなず)智樹(ともき)に、篤司(あつし)は念を()した。
「水も大事だが、飯、ちゃんと食うんだぞ」
「……食べますよ。肉を」
「なら良し」
 去っていく篤司(あつし)の後ろ姿を見送る智樹(ともき)の背後で、ユキが気持ち良く葉を広げ始めた。日当たり良好なので、光合成が(はかど)るのだ。
(明日は……森に、狩りに行くか。それとも)
 無人スーパーに調味料を買いに行っても、良いかもしれない。せっかく人間社会に――文明のある社会に、戻ってきたのであれば。

癒蔓の子・第十七話