硝子の陳列棚の中、銀に縁取られた真紅の表紙が、酷く目を惹いた。かつてその本は、手に取った者を片っ端から幻の世界へと誘ってしまったらしい。それで今は誰も触れられぬよう、銀の留め金まで施され、こうして硝子の檻の中。けれど、読まれない本に、何の価値があるというのだろう。踵を返した背後で、カチリと音がした。