何日も、いや何週間もかけて草原の余剰魔力(よじょうまりょく)を食べ、森の余剰魔力(よじょうまりょく)を食べ、山の余剰魔力(よじょうまりょく)を食べたところで、ここが小さな島だと知った。山の天辺(てっぺん)から見た景色は、見事に全面、海につながっていたから。
(この島は聖域って呼ばれてるんだってさ。この世界で一番神様が奇跡を(つか)わしてくれる場所だから)
 ()グリフォンが、母親から聞いた知識を教えてくれる。いつの間にか、すっかりオレのお付きになってしまっており、オレが起きて食事をしながら移動していると、どこからともなく飛んでくる。
 いつまでも()とは呼べないし、何か良い呼び名があれば良いんだけどな。オレが聞いても、はぐらかされるんだよな、名前……。
(ジン様、環境の浄化には慣れましたかの)
 頭上で旋回するドラゴンが(たず)ねてくる。オレはただ食事をしているだけなのに、そんな大層に(あつか)われても、戸惑(とまど)ってしまう。
(お(かげ)で聖域だけは魔物化の心配がなくなって、過ごしやすいですぞ)
 魔物というのは、余剰(よじょう)な魔力で暴走してしまった生き物のことだそうだ。魔紋(まもん)と呼ばれる模様のような(あざ)を全身に(まと)い、痛みのあまりに強力な魔法を連発しながら暴れるらしい。
(誰も魔物になりたくてなるわけではないのです。一度、魔物になってしまうと、討伐(とうばつ)されるまで暴れ続けるケダモノに成り下がる。誰がそれを望みましょうか)
 重い話だと、聞くたびに思う。それを解決するのが自分だと言われるのが、また重い。
 それにしても、魔物を元に戻す方法は、本当にないのだろうか?

1-14【やはり間違いなく、オレの存在が鍵だ】