初日から四日目までの流れ
前提
智樹の状況
- 駆け出し冒険者、18〜19歳
- 薬草の群生地を発見
- 先輩冒険者に嗅ぎつけられ、襲われる
- ジャミング機でドローンの通信を妨害される(録画は生きていた)
- 逃げながら結界の奥へ
- 庵のようなものが見える——気を取られた瞬間、致命傷を負う
- 周囲の屍蔓たちが反応
- 先輩冒険者たち、庵を確認しつつ撤退
ユキの行動
- 雪の中、倒れた智樹を見つける
- 「傷ついている、助けなきゃ」という本能で覆う
- 斑入りの葉が白く光りながら癒していく
- 根を伸ばす——傷口から内臓へ、血管へ
- 腸や膀胱の中身も吸収して養分にする
- 智樹が目覚める前に、寄生はすでに完了している
初日:目覚めと水
目覚め
- 意識が戻る
- 体が重い、でも痛みは思ったよりない
- 目を開けると視界に緑
- 自分の体から蔦が生えている
- 屍蔦だと認識——森の奥にいる危険な植物、取り憑かれたら終わり
- 絶叫、パニック
引き剥がそうとする
- 腕の蔦を掴んで引っ張る
- 激痛——根が中にある、皮膚の下、肉の中
- 悶絶するが、暴れる体力がない
- 諦めて手を離す
困惑
- 生きている、意識がある、乗っ取られていない
- 屍蔓に取り憑かれたら死ぬはずなのに
- なぜ? 分からない、何も分からない
水分補給
- 喉がものすごく渇いていることに気づく
- フラフラと立ち上がる
- なぜか「水の匂いの濃い方」が分かる(ユキの感覚が流れ込んでいる)
- 水辺に辿り着く
- 頭から突っ込んでがぶ飲み
- 息継ぎをしない——酸素はユキから届いている
- いつまでも飲み続ける——ユキの欲求が智樹の体を動かしている、半分乗っ取られている状態
- ユキが満たされて、やっと顔を上げる
- 咳き込むが、そこまで苦しくない
- 異常さに気づかない、考える余裕がない
夜
- 水辺の近くでうずくまる
- 寒いはずなのに、寒くない——蔦が体温を保っている
- 恐怖で震えながら夜を越す
ユキ(初日)
- 目を覚ました、叫んだ、引き剥がそうとした、痛かった
- また駄目だったか——と思ったら、動かなくなった
- そして歩き出した、水をくれた
- 一緒にいる、逃げない
- ぼんやりとした安堵
二日目:狩りと成長
朝
- 生き延びた、まだ生きている
- 軽い空腹を感じる、思ったほどではないが
狩りの試み
- 小動物を見つける、狩ろうとする
- 体が思うように動かない——重心が狂っている
- 蔦の重さ、位置感覚の変化、今までの身体じゃない
- 結果、擦り傷しか負わせられなかった
ユキの反応
- 小動物が傷を負った
- ユキの本能が反応する——「傷ついている、助けなきゃ」
- 智樹を助けたのと同じ本能
- 蔓が伸びる、小動物を捕らえようとする
- 小動物が暴れる
- 捕獲に力が入りすぎる——締め殺してしまう
智樹の反応
- 目の前で起きたことにドン引き
- 蔦が勝手に動いた、自分の意思じゃない
- これが屍蔓の狩りか、いやもしかして?——と疑問の芽生え
- 自分もああなっていたかもしれない
- 自分が生きているのは抵抗できなかったから(意識がなかったから)
- 恐怖が増す
それでも食べる
- 死んだ小動物、勿体ない
- 生き延びるために、葛藤しながらも食べる
食事後の変化
- 栄養がユキに流れ込む
- ユキが成長する——智樹の傷を覆うように蔓が広がる
- 傷が塞がっていく
- 更に混乱、更に恐怖
ジレンマ
- 食べると蔦が増える、視覚的に見えてしまう、怖い
- でも蔦が増えたから傷が治った
- 致命傷だったのに生きている、こいつのおかげ
- 認めたくない、でも事実
- 外側は見える、中は見えない
- 体の中にも根が張っている——どこまで広がっているか分からない恐怖
夜
- 傷口が緑に覆われている
- 昨日より確実に増えている
- 目を逸らす、見たくない、でも自分の体だから逃げられない
- 恐怖と困惑の中、二日目が終わる
ユキ(二日目)
- 初めて生きたまま保護できている対象
- 初日も水をくれた、二日目は栄養もくれた
- 小動物を助けようとして、また殺してしまった
- でも、この人間は——まだ動いている、まだ一緒にいる
- 水をくれた、栄養をくれた
- 初めて「もらう」という体験
- 知性はまだない、でもあたたかい感じがする
三日目:気づきと絶望
朝
- 水辺に行く、水を飲む
- がぶがぶ飲む、もう習慣になりつつある
気づき
- 飲んでいる途中で、手が止まる
- 初日から、これだけ水を飲んでいる
- 二日目には肉も食べた
- なのに——一度も、出していない
- 尿意がない、便意もない
確認
- 腹を触る、張っていない
- 膀胱のあたり、違和感がない
- 出ていないのではない——溜まっていない
- 飲んだそばから、食べたそばから、吸われている
パニック
- 体の中で何が起きているか、想像してしまう
- 根が内臓にある、水を吸っている、栄養も吸っている
- 俺の体、循環している、こいつと一緒に
- 俺、まだ人間か?
絶望
- 水辺でうずくまる
- 膝を抱えて震える
- 水面に映る自分の姿——蔦を生やした、人間だったもの
- 涙が出る、怖い、気持ち悪い、でも逃げられない
夜
- 頭の中がぐるぐるしている
- 体の中に根がある、水は吸われている、食べ物も吸われている
- 排泄がない、俺の体は俺だけのものじゃない
- いつ意識を奪われる、いつ苗床にされる
- 怖い、怖い、怖い——
- 考えが止まらない、でも答えは出ない
- 限界を迎えて、三日目が終わる
四日目:思考放棄と日向ぼっこ
朝
- 眠れたのか、気を失っていたのか
- 目が覚める、体が重い、頭がぼんやり
- 三日間のパニックで、心が擦り切れている
- もう、いいや——考えることをやめた
日向ぼっこ
- ふらふらと歩く、どこに行くか考えていない
- 木々の間を抜けて、開けた場所に出る
- 日が差している、あたたかい
- 岩の上に座り込む
- 何も考えない、考えられない、頭が空っぽ
ユキの反応
- 日が当たっている
- 蔓がゆるゆると広がる、葉が光を受ける
- 光合成が始まる
- 「気持ちいい」——まだ感情ではない、生理的な充足
智樹に流れ込む
- ユキが感じている「気持ちいい」が伝わってくる
- あたたかい、心地いい
- 自分の感情じゃない、でも嫌じゃない
- こいつも何か感じてるのか、と初めて思う
我に返る
- どのくらい時間が経ったか
- ふと自分の状態に気づく
- 日向ぼっこしていた、蔦を生やしたまま、穏やかに
- 怖かったのに、今は落ち着いている
- 一つだけ分かった——こいつ、殺す気はない、たぶん
狩り
- 空腹を感じる、二日目以来何も食べていない
- 立ち上がる、体は動く、二日目より少しマシ
- 小動物を見つける、狩ろうとする
- 前より体が動く、でもまだ完璧じゃない
- 獲物に傷を負わせる——致命傷ではない
- ユキが反応する、分かっていた、こうなると
- 蔦が締める、獲物が暴れる、動かなくなる
- 二日目と同じ結末、でも智樹の反応が違う
- ドン引きではなく、「ごめん」と思う
食事
- 獲物を持って水辺に戻る
- 捌いて食べる、二回目だから少し手際が良い
- 肉を食べる——体の内側で根が動く感覚
- 三日目の「気づき」があったから、今は意識してしまう
- 「あたたかい」「おなかいっぱい」という感覚が流れてくる
- まだ「嬉しい」という感情ではない、生理的な充足
- ビクッとする、分かっているけどまだ慣れない
- でも食べる、食べないと死ぬから
水を飲む
- 食事の後、水を飲む
- 尿意がないことは、もう分かっている
- 考えないようにする——出ないものは出ない
夜
- 水辺の近く、いつもの場所
- 前より少しだけ落ち着いている
- 蔦がゆるく体に巻きついている
- 最初は気持ち悪かった、今は——「温かい」と思った
- 「こいつ」から「お前」に、呼び方が変わっていることに気づく
四日目の終わりに
智樹
- まだ怖い、まだ分からないことだらけ
- でも少しだけ——「一緒にいるしかない」と思い始めている
- 諦めでもあり、受容の始まりでもある
ユキ
- この人間、一緒にいてくれる
- 水をくれる、栄養をくれる、日向で一緒にあたたまった
- 知性はまだない、感情もまだ芽生えていない
- でも「あたたかい」「満たされている」という感覚はある
- この人間といると、そういう感覚がある
五日目以降、少しずつ関係が育っていく。