第1章では、LLMメモが迷子になっていく様子を見てきました。

では、さっそく対策の話……に入る前に、一度だけ立ち止まります。

この本で紹介する工夫は、一段階ではありません。
そして、誰もが最後の段階まで進む必要はありません。

この章では、対策を選ぶための視点を先に整理して、あなたのメモがいまどの段階にいるのかを診断していきます。

2-1 資料は誰が書いて、誰が読むのか

最初に、診断のための視点を一つ導入します。

その資料は、誰が書いて、誰が読むのか。

メモや資料は、書き手と読み手の組み合わせで、四つに分けられます。

  • 人間が書いて、人間が読む
  • 人間が書いて、LLMが読む
  • LLMが書いて、人間が読む
  • LLMが書いて、LLMが読む

一つずつ見ていきましょう。

まず、人間が書いて、人間が読む。
昔ながらのメモです。

自分の言葉で書いたものを、未来の自分が自分の言葉で探す。
語彙のずれが小さいので、実は検索の面ではかなり有利な組み合わせです。

次に、人間が書いて、LLMが読む。
創作の設定資料や企画メモを、LLMに渡して相談するような場面です。

ここでは、自分が読めるだけでは足りません。
LLMが構造を読み取りやすい形になっているかどうかが、効いてきます。

三つ目が、LLMが書いて、人間が読む。
会話のサマリーや、LLMに書かせたwiki風のメモがここに入ります。

第1章の「宣伝 苦手」問題は、まさにこの組み合わせで起きました。
書き手の語彙と、探し手の語彙が、別人のようにずれるからです。

そして四つ目。LLMが書いて、LLMが読む。

LLMが書いたメモを、あとから別の会話のLLMに探させて、読ませる。
一見まわりくどい組み合わせですが、実は、この本の終着点はここにあります。

LLMとの会話が増えるほど、メモの書き手はLLMに寄っていきます。
そして、そのメモを一番よく読み返す相手も、だんだんLLMになっていきます。

つまり、LLMを使い込むほど、あなたの保管庫は下の二つの組み合わせへ育っていくのです。

どの組み合わせでも、鍵は同じです。

読み手が、あとから探せるか。

読み手が人間なら、人間の語彙で引っかかる工夫を。
読み手がLLMなら、LLMが探しやすい形と仕組みを。

この視点を持って、三つの段階を眺めてみましょう。

2-2 梅・竹・松の見取り図

「はじめに」で触れた通り、この本では検索性を育てる工夫を、梅・竹・松の三段階に分けています。

梅は、フロントマターやタグで、メモに取っ手を付ける工夫。
第3章で扱います。

竹は、全文検索で、読む前にまず絞る工夫。
Obsidianという無料アプリの標準検索から始められます。
第4章で扱います。

松は、意味や話題の近さで、うろ覚えの候補まで拾う工夫。
準備と世話が増えます。
第5章で扱います。

ここで一つ、大事なことがあります。

この三段階は、乗り換え式ではなく、積み上げ式です。

梅で付けた取っ手は、竹の全文検索でも引っかかる場所として働き続けます。
松のベクトル検索でも、取っ手の情報は候補を判断する手がかりになります。

つまり、梅の工夫は、先の段階に進んでも無駄になりません。
安心して、手前から始めてください。

そして、チャット中のLLM自身に保管庫を探させたくなったら。

その先に、MCPという通路があります。
こちらは第6章で、筆者の実例として紹介します。

2-3 自分の目標を決める

では、あなたはどこを目指せばよいのでしょうか。

目安は、ファイルの数と、いまの困りごとです。

状態まずやること
メモが30枚くらいで探しにくい梅:フロントマター+タグ
ファイルが増えて本文中の言葉も探したい竹:全文検索
言葉を忘れても話題で探したい松:ベクトル検索
チャット中にLLMへ探させたいMCP

メモが数十から数百枚なら、梅で十分に戦えます。
まだ困っていないなら、なおさら梅くらいで大丈夫です。

ファイルが増えて、取っ手だけでは追いつかなくなってきたら、竹へ。
「あの言葉、本文には書いたはず」を拾いたくなったら、全文検索の出番です。

そして、言葉そのものを思い出せなくなってきたら、松を検討します。
うろ覚えの話題で探したい場面が増えてきたら、それが合図です。

全部をやる必要はありません。
いま困っている段階の章が、あなたの目標となるでしょう。

それでは、一番手軽な工夫から始めましょう。
第3章、梅コースです。