手製本の切る・削る道具

家で作る手製本の準備物 の道具カテゴリのひとつ。紙を切る役割と背の繊維を毛羽立てる役割の2系統が同居する道具群。前者は全綴じ方で要る、後者は無線綴じ系で本領発揮。

家で作る無線綴じ で気づいた重要な事実——尚樹さんが使った段ボールカッター(カイちゃん)は商業ミーリングの家庭版で、無線綴じで背の繊維を毛羽立てる工程は糊の浸透面を物理的に広げるための正しい加工。原理を知ると道具選びの判断材料になる。

基本編

家にあるもの・百均・ホームセンターで揃う。

切る道具

  • カッターナイフ — 百均・ホームセンター。表紙の切り出し、ロングステッチ表紙のスリット入れに
  • 大型カッター — 厚紙・チップボールを切るときに刃が長いほうがラク
  • カッターマット — 画材店・百均。なければ古雑誌・時刻表・厚めの段ボールで代用可
  • はさみ — 糸切り兼用で1本、家にあるもの

削る・毛羽立てる道具

  • 段ボールカッター(カイちゃん) — ホームセンターで500〜1000円。商業ミーリングの家庭版、無線綴じの背の繊維を毛羽立てる。粗い刃で繊維だけを毛羽立てる
  • 紙ヤスリ(#60〜#100) — ホームセンター・百均。背全体を均一に荒らす、段ボールカッターの代用
  • 鋸刃ヤスリ — ホームセンター。カッターと段ボールカッターの中間、繊維のほぐし方が変わる

ステップアップ編

専門店で買う本格派系。手製本の時間の7〜8割は印刷・裁断に取られるので、ここの効率化が一番効く。家庭用裁断機は方式によって性格が違うので、用途に合わせて選ぶ。

裁断機の3方式

方式強み弱み価格帯代表機種
ギロチン型裁断機厚紙・大量枚数を一度に切れる、断面が綺麗設置場所を取る、刃の交換が大変1〜3万円プラス PK-513L、カール事務器 DC-218N
ディスクカッター安価で精密、刃が交換しやすい、コンパクト一度に切れる枚数が少ない(10枚前後)3千〜8千円カール事務器 DC-200N・DC-210N
ロータリーカッター(手持ち)カーブも切れる、初期投資が軽い直線の精度は定規次第千円台〜オルファ ロータリーカッター
  • ギロチン型裁断機 — レバーを下ろして切るタイプ。プラス PK-513L が手製本コミュニティの定番、A4対応で一度に40枚切れる。厚紙・チップボールも切れるのがディスクカッターとの大きな違い。価格は1.5〜2.5万円
  • ディスクカッター — 円盤刃がレールを走るタイプ。カール事務器 DC-200N が老舗の定番、A4対応で一度に10枚程度。安価で精密、薄手の本文紙ならこれで十分。価格は3〜5千円
  • オルファ ロータリーカッター — 手持ちで定規に沿わせて切る。コスパ最高、裁ち目を綺麗にしたいときやカーブを切るとき
  • 断裁機(業務用) — 一度に100枚以上切れる本格派、製本工房レベル。価格は数万円〜10万円超
  • 製本用ガリ入れ工具 — 業務用、家庭で出番はあまりない

選び方

  • A4プリンタ用紙の切り揃えだけしたい → ディスクカッター(カール DC-200N)で十分、コスパ最高
  • 厚紙・チップボールも切りたい、まとめ切りしたい → ギロチン型(プラス PK-513L)が本領
  • コーナー処理・カーブも切りたい → ロータリーカッター
  • 両方欲しい → ディスクカッター+ロータリーカッターの組み合わせで2万円以下

ギロチン型は**「裁断機といえばこれ」のイメージ通りの存在感がある反面、設置場所を取るので部屋のスペースと相談。ディスクカッターは机の引き出しに収まるサイズ**なので、最初の一台として導入しやすい。

使う綴じ方

道具無線綴じ和綴じ糸かがりコプトロングステッチ
カッター
カッターマット
段ボールカッター×××
紙ヤスリ×××
ペーパーカッター

ロングステッチの表紙スリット入れにはカッターが必要だけど、それ以外の綴じ方では切り出しメイン。

ミーリングとガリ入れの解像度

商業無線綴じの工程を知ると、家庭での代用がどこまで一致しているか見える。

  • ミーリング(milling) — 折丁の背を2.5〜3mm削り落として1枚ずつバラバラに切り離す。ペラ無線では不要
  • ガリ入れ — 残った背に6〜7mm間隔・深さ3〜4mmの切り込みを斜めに入れて凹凸を作る。家庭の段ボールカッターはここの代用

段ボールカッター・カッター・紙ヤスリ・鋸刃ヤスリ——どれを使うかは入手しやすさで、原理は同じ「糊の浸透面を物理的に広げる」

つまずきポイントとコツ

裁断機で一度にたくさん切ろうとして失敗する家で作る無線綴じ の既往記録の教訓そのまま。裁断機は一度に切る枚数の上限を守る、多くても10〜20枚程度まで

カッターで紙束を一度に切ろうとして斜めになる — 厚紙の切り出しは何度も浅く引くのが鉄則。一回で切ろうとすると刃が逃げる

段ボールカッターで背の繊維を切り離してしまう — 力を入れすぎ。繊維だけを毛羽立てるのが目的で、紙そのものを切り離すと本がバラバラになる。軽く撫でる感覚

紙ヤスリで背が削れすぎる#60は粗すぎることも、#100あたりが扱いやすい。背の長さに沿って一方向に動かす

カッターマットがない — 古雑誌・時刻表で代用可。机を傷つけないことが目的なので、ある程度の厚みがあれば代わる

隣接トピック

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