魔物と化したグリフォンは、相変わらず雷球やら風刃やらを吐き出しているが、それらはオレの周囲で元の魔力に戻り、そのままオレに吸収されている様子だ。
 つまり、オレに魔法は効かない。えっ、何そのチートっぽい能力。
 ()グリフォンの身の安全は確保できたものの、魔グリフォンは暴れ狂っているし、()グリフォンは泣いているし、何の解決にもなっていない。オレは改めて、相手の大きな体を見上げ、観察しようとした。でも、(にご)った魔力が、とても邪魔だった。
 食っちゃって良いよな? こんな変な(にご)り方してるしな?
 取り敢えず周りの分だけでも、と、意識して食べようとすると、ずるずると魔紋(まもん)からも、変に混ざった魔力が引き()り出されてくる。そして魔グリフォンが、ますます暴れ狂う。でも、これって、もし本当に余剰魔力(よじょうまりょく)でこんなことになったんなら、いっそ全部吸い出してあげた方が、楽になる……?
 一瞬、今はオレが背後に(かば)っている()グリフォンが、母親に(かば)われていた光景が、脳裏(のうり)をよぎった。そして、それを見透(みす)かしたかのように、()グリフォンが(つぶや)いた。
(ねえ、ぼくのことは気にしなくて良いから、もうパパを楽にしてあげて……)
 こんな()にまで気を(つか)われるなんて、情けない。もう、なるようになれ!
 ジワジワと苦しめるよりは、と、一気に(にご)った魔力を吸い出してやった。まるで、傷口から一気に(うみ)(しぼ)り出すかのように。
 ギャウ! と、魔グリフォンが叫び、倒れ伏す。一気に魔力を持っていかれれば、生命力がそれを(おぎな)おうと、これまた一気に動くから、一種のショック状態になる。()グリフォンで経験したことだ。
 けれど、流石はグリフォン、生きている。そして、オレの推測は当たっていた。
 気絶したグリフォンの、魔紋(まもん)の色が薄れていたのだ。

1-16【結局は異世界にて、魔物の希望となる】