「……う、……ぁ……」
 (うめ)篤司(あつし)を地面に組み()せ、智樹(ともき)とユキは全力でその身体を固定していた。
 新株の癒蔓(いやしかずら)が傷口から侵入(しんにゅう)し、肉を割り、血管へと根を伸ばしていく。宿主が拒絶すれば、反射で締め殺される。
「動かないで、篤司(あつし)さん! 俺がついてる、大丈夫だから!」
 智樹(ともき)(さけ)びと、ユキの「だいじょうぶ、このひとは逃げない」という思念が、新株へと伝わっていく。パニックに(おちい)りかけた新株が、次第に落ち着きを取り戻し、篤司(あつし)の呼吸を、循環(じゅんかん)を、その支配下に置いていった。
(……『キズナ』?)
 やがて、ユキのその不思議そうな思念と同時に、奇跡(きせき)——あるいは怪異(かいい)が始まった。
 篤司(あつし)の胸に密集した(つた)が白い光を放つたび、彼の肉体が変容していく。
 深く刻まれた目尻(めじり)(しわ)が消え、白髪が黒々と染まり、(はだ)に異常なまでの張りが戻っていく。
「若返ってる……。これ……どこまで戻るんだ……?」
 智樹(ともき)呆然(ぼうぜん)と見守る中、そこに横たわっていたのは、五十代の高峰(たかみね)篤司(あつし)ではなかった。
 三十年近く前、まだ何も知らず、何も背負っていなかった頃の——二十代前半の、高峰(たかみね)篤司(あつし)の姿だった。

癒蔓の子・特別編:キズナ・3