四日目、智樹は篤司にキズナとの共闘を提案した。
「キズナはまだ、力加減が分かりません。篤司さんの『助けたい』とか『殺したくない』という意志が強すぎると、逆にキズナがパニックになって相手を締め殺します」
茂みの奥、一羽のウサギを前に、篤司は精神を集中させた。左胸から伸びるキズナの蔦が、彼の感情に反応して鋭く脈打つ。
「……落ち着け。キズナ、殺すな。ただ、止めろ」
篤司が念じると、蔦は鞭のようにしなやかに伸び、ウサギを優しく絡め取った。かつてユキがウサギを粉砕してしまったときとは違う、洗練された「共闘」。それは、智樹という先達が、最初から「癒蔓は意志が通じる隣人だ」と教えた結果だった。
「……できましたね、篤司さん」
「……ああ。ユキが、キズナに教えてくれたんだろう」
ユキが白い光をポコポコと溢れさせ、それに呼応するようにキズナのギザギザした葉が、嬉しげに篤司の肩を撫でた。
「……よし。明日には、町に帰ろう」
篤司は、若返った自分の手を見つめ、静かに告げた。
ここからは、新しいカバーストーリーが必要になる。この数日二人で考えたのは、高峰篤司は死に、その「息子と思われる記憶喪失の青年」が智樹に保護されるという、奇妙な物語だ。粗が多いのはその通りなのだが、ただでさえ智樹の不老が注目されている中、若返る可能性まで協会の役員連中に知られたら——と、こういう形になった。
「はい。帰りましょう、篤司さん。……調味料、買いに行かないといけませんしね」
森を抜ける二人の足取りは、驚くほど軽かった。一人は十八歳の少年のまま、もう一人は二十代前半の青年の姿で。
出口のない身体、呼吸を忘れた肺、そして永遠に近い時間。
かつて独りで絶望の淵にいた智樹に、ようやく対等の「隣人」が生まれた瞬間だった。