家で作る中綴じ
手製本の地図 の「変則もの」に位置する、一番入門的な綴じ。二つ折りにした紙束の中心(折り目)を、ホチキスの針か糸で留めるだけ。背を糊で固める工程がないので、薄い冊子専用だけれど、見開きが水平にパタンと開くのが中綴じだけの強み。コピ本・ZINE・対談本・薄いイラスト集の定番で、「まず一冊を形にする」の最短ルートになる。
留め方は二つ——ホチキス(速くて量産向き)と糸(手製本感が出て遊べる)。同じ中綴じでも仕上がりの性格がかなり違うので、版の目的で選ぶ。
中綴じって何が違うの
家で作る無線綴じ・家で作る糸かがり綴じ と比べると位置が見える。
無線綴じ・糸かがりとの違い
無線綴じや糸かがりは、紙を折った束(折丁)をいくつも積み重ねて背を糊や糸でまとめる。中綴じは原則折丁ひとつ——全ページをまとめて一度に二つ折りにし、その中心を留める。だから厚い本は作れないが、工程がまっすぐで、見開きが綴じ際まで完全に開く(糊で固めた背は開きにくい、という無線綴じの弱点が無い)。
4の倍数ページになる
二つ折りの構造上、紙1枚で4ページ分(表裏×見開き2面)。だから中綴じの本は必ず4の倍数ページになる。台割(ページ構成)を組むときの前提。
厚みの限界=クリープ
ページを増やすと、束の外側の紙ほど小口(折りの反対側)にせり出す。これをクリープと呼ぶ。厚くなるほど内側ページが飛び出して、断裁しないと小口が階段状になる。実用の目安は40〜60ページくらいまで。それ以上は中綴じの限界で、無線綴じや糸かがりの領分に移る。
二つの留め方:ホチキス vs 糸
土台はシンプルな二択。配布用か、愛蔵版か。
| 項目 | ホチキス中綴じ | 糸中綴じ(パンフレットステッチ) |
|---|---|---|
| 手軽さ | とても高い | 少し手間(穴あけ・糸通し・締め調整) |
| 強度 | 安定しやすい | 糸・穴・締め具合次第 |
| 見た目 | コピ本感(金属針) | 手製本感(柔らかい) |
| 開きやすさ | 良い | 良い |
| 保存性 | 針のサビが少し気になる | 糸ならサビなし |
| 量産性 | 強い | 少部数向き |
| 遊び | 少なめ | 糸色・結び目で遊べる |
配布用・気軽に量産ならホチキス、保存用・愛蔵版・手製本感を出したい版なら糸、というのが基本の選び分け。
ホチキス中綴じ
強みは速い・簡単・安定・量産向き。短所は、金属針なのでコピー本感が出ること、長期保存で針のサビが出ること、背の表情で遊ぶ余地が少ないこと。
留める道具は段階がある。
- 普通のホチキス+開いて使う — ホチキスを180度開き、折り目の外側から針を刺して、裏で爪を手で曲げる。道具ゼロで始められるが、位置と曲げに手間と精度が要る。10枚(40ページ)くらいまでが無難
- 中とじ対応ホチキス/「ホッチくる」 — アームが長い、または回転して中綴じ位置まで針が届く専用機。位置が安定して楽。少部数を量産するなら投資価値あり
- フラットクリンチ — 針が平らに閉じるタイプ。重ねたときに嵩張らない
糸中綴じ(パンフレットステッチ)
同じ中綴じでも、糸だと一気に手製本感が出る。背に糸が見えるので色選びで遊べるし、金属感がなく柔らかい仕上がり。サビない。短所は、穴あけ・糸通し・テンション調整が要ること。締めすぎると紙が裂け、緩いと背がふかっとする。ホチキスより手間は増える。
正式にはパンフレットステッチと呼ばれ、穴の数で**3つ目綴じ(3穴)/5つ目綴じ(5穴)**がある。一折(ひとつの折丁)を縫う最小の糸綴じ。
揃えるもの
紙まわり(共通)
- 本文の紙 — A4を二つ折りでA5、など。面付け(ページの並べ方)が中綴じ独特で、束の外側の1枚が「一番外と一番内のページ」を受け持つ。手で考えると混乱するので、面付け順は 家で作る糸かがり綴じ と同じくLLMに頼むのが早い
- ヘラ(ボーンフォルダー) — 折り目をしっかりしごく。なければ定規の角・スプーンの柄・プラカードで代用。束が厚いほど折り目の甘さが効くので省かない
- 定規・カッター — クリープぶんの小口を化粧断ちするとき
ホチキス派
- 中とじ対応ホチキス、または「ホッチくる」、なければ普通のホチキス(開いて使う)
糸派
- 針 — 製本針がベストだが、ふとん針・刺繍針で代用可
- 綴じ糸 — 麻糸・リネン糸が伝統的。刺繍糸3〜4本どりや丈夫なボタン付け糸でも。本の高さの3〜4倍を用意
- 目打ち — 折り目に穴を開ける。錐・千枚通し・百均の目打ちでOK
- テンプレート — 穴位置を全部のページで揃えるための型紙(一度作って流用)
手順:ホチキス中綴じ
- 面付けして両面印刷する
- ページ順に重ねて、まとめて二つ折り。ヘラで折り目をしっかりしごく
- 折り目の中心線上、天と地から等間隔の2点を留める。中とじホチキスなら開いた状態で位置を合わせて押す。普通のホチキスなら外から刺して裏で爪を曲げる
- クリープで飛び出した小口を、定規を当てて化粧断ちすると締まる
手順:糸中綴じ(3つ目綴じ)
折り目に3つの穴——中央(C)、天寄り(A)、地寄り(B)——を開けておく。
- 中央 C から内側 → 外側へ糸を出す(糸端を内側に15cmほど残す)
- 外側を通って天 A へ、A から内側へ
- 内側を通って(C を飛ばして)地 B へ、B から外側へ
- 外側を通って中央 C に戻り、C から内側へ
- 内側で、最初に残した糸端と、中央の渡り糸をまたいで固結び
中央の渡り糸を挟んで結ぶと、糸が安定して緩みにくい。結び目は内側に隠れる(背に出したいなら外側で結ぶ変則も可)。穴を5つにすれば5つ目綴じで、同じ要領で背の糸目が増えて装飾性が上がる。
つまずきポイントとコツ
面付けを間違える — 中綴じは外側の紙ほど外周ページを持つので、ページ順が直感に反する。台割→面付けはLLMに出力させて確認するのが確実
小口が階段になる(クリープ) — 厚い束の宿命。化粧断ちで揃える前提で作るか、そもそも40〜60ページに収める。それ以上は無線綴じへ
普通のホチキスで爪が曲がらない/斜めになる — 開いて刺すときは、下に消しゴムや厚紙を当てて針をまっすぐ貫通させ、裏で爪を内側へ倒す。数をこなすなら中とじ専用に切り替えた方が早い
糸が緩む/締めすぎて裂ける — 「ピンと張るけど紙が変形しない」のギリギリ。最後の結びの瞬間に緩むと全体が動くので、渡り糸をまたいで結ぶ
折り目が甘くて背が膨らむ — 束が厚いと一度に折りにくい。数枚ずつ折ってから重ねると折り目が揃う(ただし中綴じは1折丁なので、最終的に全部を入れ子にする)
次の一歩
- 厚い本を作りたくなったら → 背を糊で固める 家で作る無線綴じ、折丁を複数縫う 家で作る糸かがり綴じ へ。中綴じの「40〜60ページの壁」を超える道
- 中身で遊びたいなら → ZINE。綴じは中綴じのまま、何を綴じるかへ軸足を移す(手製本の地図 の「変則もの」)
- 紙を選び込むなら → 手製本の紙。中綴じは見開きが開く=ノド側の絵柄がしっかり見えるので、紙の白さ・厚みの選択が誌面に直結する
中綴じのお供
道具を買うなら
- 中とじ対応ホチキス・「ホッチくる」 — 文具店・通販。ZINE/コピ本作りの定番
- 綴じ糸(リネン・刺繍糸)— ユザワヤ・オカダヤなど手芸店が色豊富
手順を見るなら
- ソース欄の「こまらせ・あん堂」(普通のホチキス編)と「OSANPO」(糸編)が、写真付きで分かりやすい
ソース
- 普通のホチキスでコピー本を中綴じ製本する方法(こまらせ・あん堂) — 文学フリマ/ZINE視点、普通のホチキスで中綴じするコツ
- 中綴じホッチキス「ホッチくる」(フムフムハック) — ZINE・コピー本向けの中綴じ専用ホチキス紹介
- ホッチキスできれいに中綴じ製本する方法(冊子製本キング) — 位置決めと綺麗に綴じるコツ
- 特別な道具を使わないで「糸で中綴じ」ノートを作ってみました(OSANPO Shopping) — 糸中綴じの実作記録
- ZINEの綴じ方5選(ZINEメーカー) — 綴じ方ごとの特徴とデメリット比較
- 冊子の製本方法|ホチキスあり・なし(iropuri) — 製本方式の概観