手製本の糸

家で作る手製本の準備物 の道具カテゴリのひとつ。糸を使う綴じ方(和綴じ・糸かがり綴じ・コプト綴じ・ロングステッチ)の主役で、無線綴じだけは出番なし。

ここは道具のなかでも意匠が一番効くところ。糸色を変えるだけで一冊の世界観が変わる——白い紙に黒糸なら古典装、生成りの紙にカラフルな刺繍糸ならモダン装、クラフト紙に麻糸なら中世帳簿感。選ぶこと自体が楽しい領分。

基本編

家にあるもの・百均・手芸店で揃う代用品系。まず一冊作るなら全部これで足りる

  • 25番刺繍糸(3〜4本どり) — 手芸店・百均・ダイソー。色数が圧倒的に豊富、和紙との相性を選ぶ楽しみがある。和綴じ・糸かがり綴じの定番代用
  • ボタン付け糸 — 手芸店・百均。丈夫で扱いやすい代用品、刺繍糸より一段強い
  • 太めの麻紐(2mm前後) — ホームセンター・百均。中世風の質実剛健な仕上がり、ロングステッチに合う
  • 手縫い用ミシン糸の太め — 細い綴じが好みなら、コプト綴じの繊細仕上げ向き

糸の長さの目安

  • 和綴じ:天地の長さ × 3〜4倍
  • 糸かがり綴じ:本の高さ × 折丁数 × 2 + 余裕
  • コプト綴じ・ロングステッチ:本の高さ × 折丁数 × 3〜4 + 余裕

長すぎるぶんには後で切ればいいだけなので、ケチらず長めに取るのが事故が少ない。継ぎ足しは構造的に弱くなる。

ステップアップ編

専門店で買う本格派系。長く続けるなら見えてくる景色

  • 製本用絹糸 — まるみず組・美篶堂。和綴じの本格派、糸の通りと光沢が違う。色も伝統色の系統で揃う
  • 製本用麻糸 — まるみず組・美篶堂。糸かがり・コプト・ロングステッチの伝統素材、太さの選択肢が豊富
  • リネン糸(亜麻糸) — 手芸店(ユザワヤ・オカダヤ)・レザークラフト店。糸かがり綴じの西洋伝統素材、生成り(リネン色)は何にでも合う無難な選択
  • ワックスコード — レザークラフト店(クラフト社など)。最初からワックス処理済み、コプト綴じのチェーンステッチがピシッと決まる、糸が糸に擦れる動作に強い
  • 木綿糸 — 製本用の太め、糸かがり綴じの伝統素材のひとつ
  • ビーズ用ナイロン糸 — 細くて強い、現代的な綴じ目にしたいとき
  • 金糸・銀糸 — 装飾用、飾り綴じや一冊スペシャル枠で

糸ワックス(必須ではないけど効くアイテム)

  • ビーズワックス(蜜蝋) — 手芸店・百均のキャンドル用ワックスで代用可。糸に通すと滑りが良くなる、長い糸を扱うコプト綴じ・ロングステッチで地味に効く
  • ワックス入り麻糸 — 最初からワックス処理済み、レザークラフト店

使う綴じ方

和綴じ糸かがりコプトロングステッチ
刺繍糸(25番3〜4本どり)
ボタン付け糸
麻紐(太め)
製本用絹糸
製本用麻糸
リネン糸
ワックスコード

◎が本領、○が普通に使える、△は工夫すれば使える。

糸色のグラデーション設計

意匠面の話。糸色は表紙と本文と組み合わせて2〜3色で完結する設計が気持ちいい。

  • 古典装:白い紙に黒・紺・深い赤
  • モダン装:生成りの紙にカラフルな刺繍糸
  • 中世風:クラフト紙に生成りの麻糸
  • 質実剛健:革表紙に焦茶のワックスコード
  • 和の上品:和紙表紙に伝統色の絹糸(朱・墨・利休・藤)

糸の太さで印象が一段変わる——細い糸は繊細、太い糸は力強い。コプト綴じは太いほどチェーンステッチがはっきり見える。

つまずきポイントとコツ

糸が足りなくなる — 「長すぎる」が事故が少ない。短すぎたら継ぎ足すしかなく、継ぎ目は構造的に弱い

糸がよじれる・絡まる — 引くときは一定方向、急に引かない。刺繍糸を3〜4本どりにするときは端を軽く指で撚っておく

糸が毛羽立つ・切れる — 長い糸を通す動作が多いと摩擦の蓄積が効く。蜜蝋・ビーズワックスを糸に通すだけで体感が違う

糸の色を選びすぎて沼にハマる — 「2〜3色で完結する設計」を意識すると組み合わせが収束する。一冊ごとに色を変えるシリーズ運用も楽しい

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