お茶の飲み方

お茶の世界には、文化圏ごと・お茶ごとに違う「淹れ方の様式」がある。同じ茶葉でも、急須で淹れるか・蓋碗で何煎も淹れるか・煮出すかで、まるで別物の飲み物になる。

ここでは「分類軸(六大茶類・産地)」から外れた、飲み方そのものの地形を集める。

中国茶:工夫茶(功夫茶)

中国茶のフォーマルな淹れ方。「工夫」は「手間と時間をかける」の意で、もともと福建・広東で青茶を淹れるために発達した様式。少ない湯量・たっぷりの茶葉・短い抽出を繰り返して、何煎も飲み分ける。

道具立て:

  • 蓋碗(がいわん) — 蓋つき茶碗。茶葉を入れて湯を注ぎ、蓋で葉を押さえながら茶海に注ぐ。直接飲んでもいい万能選手
  • 茶壺(ちゃこ) — 小ぶりの急須。茶葉が踊る大きさで、青茶や黒茶に向く。素材は紫砂・磁器・ガラスなど
  • 茶海(ちゃかい)/公道杯(こうどうはい) — ピッチャー。茶壺・蓋碗から一旦受けて、複数の杯に均等な濃さで注ぎ分ける
  • 聞香杯(もんこうはい) — 細長い香り嗅ぎ用の杯。台湾式工夫茶で使う。茶を一度ここに注ぎ、別の杯に移してから、聞香杯に残った香りを楽しむ

煎ごとに湯を注いで30秒〜数分蒸らし、茶海経由で杯に注ぎ切る。茶葉は出し切らず、また湯を注ぐ。これを5〜10煎繰り返すこともある。

中国茶:気軽な大杯式・グラス式

工夫茶ほどフォーマルでない、日常の中国茶の飲み方。中国の人が自宅やオフィスで飲むのは、こちらの方が圧倒的に多い。

  • 耐熱グラスやマグカップに茶葉を直接入れて湯を注ぐ — 茶葉が沈むのを待ってそのまま飲む
  • 湯を注ぎ足しながら何煎も飲む — 茶碗の中に三分の一くらい茶湯が残ったタイミングで湯を継ぎ足す。茶葉が湯に浸かりっぱなしで濃くなりすぎないよう、注ぎ切るタイミングと注ぎ足しのリズムを取る

白茶や緑茶など、葉が長く湯に浸かっても渋くなりすぎない茶に向く。蓋つきマグカップだと、飲むときに茶葉を蓋で寄せながら飲める。

台湾茶:茶藝

台湾の 茶藝(チャーイー) は、工夫茶を基礎に1970年代に成立した独自の様式。文化復興の流れの中で「飲み方の作法」として体系化されたもの。

工夫茶からの発展点:

  • 聞香杯と茶杯のペア使用 — 香りを移し替える楽しみ方が定着
  • 茶海の活発な使用 — 「茶海」の呼称は主に台湾・日本、大陸では「公道杯」と呼ぶ
  • 道具立てが豊富 — 茶盤・茶巾・茶夾・茶則・茶針・茶荷など、お茶のための道具が一式揃う

凍頂烏龍や高山烏龍を、香り重視で楽しむのに最適化されている。

注ぎ足しの楽しみ

工夫茶でも大杯式でも、共通するのは「同じ茶葉から何煎も別の表情を引き出す」こと。一煎目はまだ眠っていた茶葉が湯で開き、二煎目で本領、三煎目から落ち着き、後ろの方では淡くなる。煎ごとに違う風景が見えるのが、注ぎ足し飲みの面白さ。

後述する紅茶や急須の日本茶は基本的に一煎で出し切る文化(玉露の二煎目くらいまでは楽しまれる)。何煎も飲むのは中国茶・台湾茶の文化的な特性で、その遅さに身を任せる時間に、贅沢があると感じる人は多い。

日本茶:急須

日本茶の基本は急須+湯呑み。茶葉によって温度を変えるのが要点。

湯温抽出時間
玉露40〜60℃約1〜2分(うま味重視)
上級煎茶70℃30秒〜1分
中級煎茶80〜90℃30秒〜1分
番茶・ほうじ茶熱湯30秒程度

複数の湯呑みに注ぐときは 廻し注ぎ(まわしつぎ) で少しずつ順に注ぎ、最後の一滴まで注ぎ切る。残すと次の煎が苦くなる。低温・じっくりは玉露の甘み(テアニン)を引き出すため、高温・短時間は香りと渋みのバランスのため、と温度の使い分けに理由がある。

抹茶:薄茶と濃茶

抹茶は粉茶を湯と混ぜて飲むスタイル。茶筅(ちゃせん)の使い方で「点てる」と「練る」が分かれる。

薄茶(うすちゃ)濃茶(こいちゃ)
抹茶約2g約4g
約60ml(90℃以上)約30〜40ml(80℃前後)
茶筅の動きM字に素早く、泡を立てるなでるようにゆっくり練る
仕上がり細かい泡、軽やか艶のあるとろみ、濃厚
言い方「点てる」「練る」

普段の一服は薄茶、特別な席で味わうのが濃茶、という棲み分け。

紅茶:ゴールデンルール

英国式の紅茶を淹れるための5つの基本。

  1. 新鮮な茶葉 — 香りが命なので開封後は早めに使う
  2. ティーポットを温める — 沸かした湯で予熱しておく
  3. 適切な水 — 軟水が向く(日本の水道水はだいたい合う)
  4. しっかり沸騰 — 5円玉大の泡が立つくらいまで
  5. 正しい蒸らし時間 — 細かい茶葉2.5〜3分、大きい茶葉3〜4分

ストレート向け茶葉とミルク向け茶葉は別。ミルクティー用には茶葉を1.5〜2倍に増やして濃く出す。

紅茶:ロイヤルミルクティーとチャイ

ストレート抽出ではない紅茶の飲み方。

  • ロイヤルミルクティー — 茶葉を少量の湯で煮出してから、温めたミルクを加えてさらに煮る。コクの方向
  • チャイ — インド式の煮出しミルクティー。茶葉とミルクとスパイス(カルダモン・シナモン・ジンジャー・クローブ)を一緒に煮る。スパイスの方向

煮出すことで濃いミルクとの相性が出る。茶葉はアッサムやCTCのような濃く出るタイプが合う。

水出し(コールドブリュー)

熱湯ではなく冷水で時間をかけて抽出する方法。低温だと タンニンとカフェインが溶け出しにくい ため、渋みと苦みが抑えられて、旨味と甘みが前に出るマイルドな茶になる。お茶の種類を選ばず広く使える。

茶種ごとの目安

茶葉と水の比率抽出時間
玉露水1Lに茶葉15〜20g冷蔵庫で3〜5時間
煎茶水1Lに茶葉15〜20g冷蔵庫で2〜5時間
白茶/烏龍/緑茶(中国茶)水120〜150mlに茶葉1g室温1時間 or 冷蔵庫2時間以上
紅茶水500mlに茶葉10g(or ティーバッグ1個+350ml)冷蔵庫8〜12時間(ティーバッグなら2時間)

ポイント

  • 玉露は水出しと相性が抜群 — 旨味成分のテアニンは冷水でも溶け出すが、苦味のEGCGとカフェインは冷水だとあまり出ない。玉露の旨味だけが浮き上がる
  • 白茶も水出しに向く — もともと低温・長時間で開く茶葉なので、冷水でも素直に旨味が出る
  • 抽出後は茶葉を取り除く — 浸けっぱなしにすると後からえぐみが出る
  • 水は軟水(浄水器・ミネラルウォーター) — 塩素は香りの邪魔になる
  • 衛生面の注意 — 長時間水中に浸す抽出法なので、清潔な容器を使い、作ったものは1日以内に飲み切る

「注ぎ足し飲み」が「同じ茶葉から表情の変化を引き出す」のに対し、水出しは「同じ茶葉から渋みを抜いた別の表情を引き出す」アプローチ。夏場や、カフェインを控えたい夜にも使える。

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